研究の背景
当社は研究拠点「ロートリサーチビレッジ京都」において、「再生美容」を重点研究テーマに掲げ、基礎研究や素材開発等、より川上の研究を積極的に推進しております。最近では皮膚老化の要因の一つである「糖化」に着目。当社は糖化と肌老化の関係についてかねてより研究を重ねていましたが、今回、表皮の糖化とシミの関係に着目した研究を行いました。
「糖化」について
「糖化」とはたんぱく質に糖が結合する現象で、糖化による最終生成物を「AGEs(advanced glycation end products:終末糖化産物)」と呼びます。血管で糖化が起こると、AGEsの蓄積により毛細血管障害が起こり、肌の真皮ではコラーゲンの糖化により線維が固くなり、ハリ弾力の低下を引き起こす等、肌老化の原因の一つになると言われています。
研究の成果:表皮細胞の糖化が、メラニン生成を引き起こすサイトカインを発生させる
結果:表皮角化細胞の糖化により、メラニン生成を引き起こすサイトカイン(EDN1、COX2、IL-1α)のmRNA発現量が亢進することを確認しました。

試験方法:表皮角化細胞を糖化させ、24時間後に各サイトカインのmRNA量を測定した。(ロート研究所実施)
考察:「糖化」ケアで「しみ・そばかす」へのアプローチが可能になると考えられます。
表皮細胞の糖化がメラニン生成を引き起こすサイトカイン生成を増加させることが明らかになりました。紫外線だけでなく、表皮の糖化もシミに関与すると考えられます。このことより、抗糖化化粧品により、肌の透明感・ハリ弾力・保湿維持のみならず、「しみ・そばかす」へのアプローチができると期待されます。
今後、糖化した細胞の上記サイトカイン産生メカニズムの追求を行うとともに、糖化に着目した抗老化化粧品の開発に研究結果を応用していきたいと考えます。
<用語解説>
・サイトカインについて
細胞間の情報伝達を担うたんぱく質です。細胞からサイトカインが放出されることで、周辺の細胞に様々な生体反応が引き起こされます。免疫反応やアレルギー反応を始め、血管拡張やメラニン生成等も、このサイトカインが引き金となり起こります。
・サイトカインとメラニン生成との関係
- EDN1(エンドセリン1)
- 紫外線(UVB)の照射によって表皮角化細胞より産生され、色素細胞の増殖、メラニン生成、樹状突起の伸長を促進することが知られています。表皮角化細胞の糖化によりEDN1産生が増える事は今回の研究で初めて明らかになりました。
- COX-2(シクロオキシゲナーゼ2)
- 炎症を起こす「プロスタグランジン」という情報伝達因子を作るための酵素。メラニン産生を誘導する炎症性サイトカインとして知られています。
- IL-1α(インターロイキン1α)
- 炎症時に分泌される情報伝達因子です。メラニン産生を誘導する炎症性サイトカインとして知られています。